城山三郎氏を悼む

城山三郎氏を悼む
 藤沢周平氏、吉村昭氏、城山三郎氏といえば、揃って1927年(昭和2年)生まれの小説家である。藤沢氏は10年前、吉村氏は昨年、続いて城山氏が亡くなった。藤沢氏は教員や記者をしながら小説を書いていたが、世に出たのは40歳半ばであり、最近の映画では真田広之の「たそがれ清兵衛」や木村拓也の「武士の一分」がある。

 城山氏の書斎

 ほとんどの小説は江戸時代の庶民の恨みや義侠などを描いたもので暗い作品が多い。吉村氏については、昨年このブログで取り上げたとおり、史実を基にした小説が主体で、すべてについて克明な描写が印象的な作品が多い。私は殆んどの作品に目を通している。

 城山氏の小説は主として経済と歴史上の人物を取り上げた作品で、愛読書として挙げるビジネスマンが多い。しかしながら、氏の作品の底辺を流れる哲学は若いころの軍隊生活から学んだ反権力思想である。

 だから、先年、個人情報保護法に唐突として反対の旗振りをしていたが、そこには言論の自由に対する権力の動きを読み取っていたからである。私は城山作品としては、広田弘毅の「落日燃ゆ」など数点しか読んではいない。ご冥福を祈る。