ドストエフスキー

カラマーゾフの兄弟
   いわずと知れた文豪ドストエフスキーの最後の重厚な長編小説で「罪と罰」と並ぶものとされている。大学の先生方が新入生に読んでもらいた文学作品では、たいていのところに顔を出している。父親殺しの犯人探しというミステリーで、恋愛、裏切り、借金、遺産相続、殺人、家庭内暴力、幼児虐待、民族問題など、現代とは変わらないような事件や話が詰まっている。未完の大作といわれているが、これだけで完結していると思う。 現在、東京外大の学長の亀山郁夫教授(60歳)が、日本語として読みやすい新訳で完結して、ブームを起こした。

    一例を紹介すると、最後の方のエピローグで、三男のアリョーシャの言葉で、原卓也訳では「ああ、子供たち、ああ、愛すべき親友たち、人生を恐れないで!」というところは、亀山訳では「そう、かわいい子どもたち、かわいい友人たち、どうか人生を恐れないで!」と現代的な表現となっている。

   団塊の世代の人たちは、高校から大学にかけて、テレビ、ゲーム機、パソコンなどがない時代だったので、日本文学や世界文学の名作に触れたものである。彼らが定年退職してこれまでよりも時間の余裕ができたことも一因となって、海外名作作品の新訳出版や60〜70年代のベストセラーの復刊が出版界ではブームとなっている。インターネットの普及や少子化の影響で出版物の売上げが減少している。これらの一連の動きと電子書籍化で、2兆円産業と言われている出版業を維持していけるかどうか問題だ。

日本語訳
1)米川正夫岩波文庫(1〜4)
2)原卓也訳:新潮文庫(上、中、下)
3)亀山郁夫訳:光文社文庫(1〜5)
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