毀損したブランド

メイドインジャパンの回復

  ブランドという信用を築きあげるには多大な努力と長い年月を要するが、これを壊すのには手間暇がかからない。1945年の敗戦から50年間にわたり、モノ作りというブランドの日本的イメージを世界的に築きあげてきたが、バブルの崩壊とともに、その像が揺らぎだした。その象徴的な存在であったトヨタソニーが品質管理と製品の信頼性の矢面に立たされた事だ。両者とも何かに嵌められたという要素もあるように思うが、そのような油断や隙を作ってしまったことにもその原因があろう。

 

  311災害に伴う原発の事故は、日本的ブランドに致命的な傷を与えかねないものだ。宇宙開発とか原子力発電は工学のあらゆる分野を総合した巨大技術である。日本の製造業では、品質管理を中心として、信頼性向上技術、欠陥排除技術、事故をなくす予測技術、人間工学の開発など1960年から70年代にかけて大幅に進歩向上して高度経済成長を遂げた。


  ところが絶対安全という神話に閉ざされていた原子力技術では、ロボット技術など安全にかかわる要素は故障という前提では排除せざるをえなかった。世界の産業用ロボットの半数を日本製が占めているロボット先進国だから、原発の現場に投入できるものはいくらでもあると思っていた。ところが、今回の事故現場で、原発用の無人ロボットがなかった事に驚くことになった。


  原発安全神話を揺るがしている事故であるが、これに対して、どのように安定的な停止状態に持っていくのかが問われている。燃料棒が融けたとか融けていないと言う問題ではなく、再臨界を起こさない事が最重要である。これを防ぐことには成功しているから、後は汚染水をクリーンにして、冷却水として安定的に循環させるシステムを完成させることだ。数か月以内に3機とも安定化に成功すれば、あらためて日本のブランドの威信回復の第一歩となる事であろう。そうなる事を期待している。