ノルマに追われる警察官

犯罪を作り上げる警察
   普通の会社では半期ごとに業績評価が行われてボーナスの査定とされる。警察官の業績は取り調べ数や検挙数で査定される。神奈川県警では自転車盗難事件を捏造した警官がいた。検挙実績を上げる為に、趣味を通じて知り合った友達2人に犯人と被害者の役を演じて貰い、礼金まで払ったという事件だ。警察署内での積立金紛失事件があり、署員全員の携帯の履歴を調べたところ、自転車窃盗犯との通信履歴があった事から発覚したという。

   兵庫県警の女性巡査に痴漢したとして、県迷惑防止条例違反の罪に問われた神戸市の競艇選手に対して、無罪とした神戸地裁判決が確定した。判決は被害を訴えた女性巡査の証言について「信用性に疑問がある」と指摘した。 弁護人は「捜査当局が犯罪者を作ったと言われても仕方がない」と批判した。県警須磨署の男女の警察官3人がチームを組み、連続発生中のわいせつ事件を捜査していた。私服の女性警官が、すれ違いざまに接触し、少し間を置いて女性巡査は「きゃあ」と悲鳴を上げると、残りの2人の警官が駆けつけて痴漢容疑で逮捕した事件だ。

   飲酒検問の際、アルコールの検出値を水増しし、交通切符を切ったとして、大阪府警泉南署交通課 警部補を虚偽有印公文書作成・同行使と証拠隠滅の疑いで逮捕した。 大阪府泉南市内で飲酒検問を実施した際、原付きバイクを 運転していた市内の60代男性の呼気から、酒気帯び運転の基準値ちょうどの1リットルあたり0.15ミリグラムの アルコールが検出されたように記録紙の数値を改ざんして、虚偽の交通切符(赤切符)を切った疑いだ。

   以上のような警官の不祥事は新聞で報道された事で氷山の一角にすぎない。次のケースは新聞などでは報道されていないが、悪質な職務質問から、警察署に連行されて取り調べられた友人の話だ。新宿で散歩中に近寄ってきた警官に言いがかりをつけられて、近くの交番に、そして警察署にまで連行され、小部屋の中に隔離されて、合計3時間ほど身分を拘束されて尋問されたという。彼はこの話をもとにして、詳しく小説にしている。市民の安全と財産を守るべき組織が、全く理由もなく最も尊重すべき人権を踏みにじるような暴挙を白昼堂々と行うという事に恐怖を覚えると同時に、日本の民主主義に対する疑問まで湧いてくる。


*葦 享(あしあきら)著「伊奈葉さん 日本を憂う」中央公論事業出版 2008年 1500円
なお、次の本については既に紹介した。
*葦 享著「伊奈葉くん アメリカを見る」中央公論事業出版 2005年 1300円