返済猶予

政令よりは景気回復
 新政権で郵政と金融担当の亀井大臣の存在感が、その大きくなった顔と共に前面に出ている。警察官僚出身で、その情報力をもって自民党時代でも、さまざまな政局の山場を作ってきた。「義理人情が廃れたら日本は終わり」という浪花節にはついていけないし、基本的には利権政治家のイメージは簡単には消えない。

 小泉首相に裏切られてから、郵政民営化を柱とした改革が生み出した弱肉強食の風潮、地方経済の疲弊、格差の拡大を徹底的に批判して国民新党を結成した。その延長上で打ち出されてきたのが、平成の徳政令という中小企業と住宅ローンに対する借金返済モラトリアムである。猶予は3年程度とはいえ、不良債権を抱えることになる金融機関の株が暴落した。

 借財の返済を遅らせたところで、返済する能力をつけるためには、新たな資金を調達しなければならない。返済能力の薄い企業には、誰も金を貸さない。新規資金がなければ、むしろその間にさらに経営体力を落とし事態を悪化させることなる。いい加減な貸し出しで経営不振に落ち込んでいる新銀行東京を批判している民主党マニフェストとは相いれない。

 大向こうを狙った人気取りかもしれないが、具体的な実施には多くの議論が予想される。金融担当大臣として、するべきことは、金融機関の流動性を確保するために、十分に資金を投入して銀行の連鎖倒産と取り付けを避けることのように思える。中小企業の本当の気持ちは、借金返済猶予ではなくて、景気の回復であろう。徳政令は確かに庶民の味方のように思えるが、その施策には慎重な配慮が欠かせない。
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