ダム建設のこと

前例踏襲主義と無謬性主義
 一度始めた事業は絶対に辞めない、一度もらった基金は絶対に返さないのが役所というところの考えである。公の仕事はすべて前例踏襲主義であり、全く誤りはないという無謬性(むびゅうせい)主義の原則がある。

 60年にもわたり自民党政権は役所のこの考え方を認めて政権を維持してきた。今回の衆議院選挙では国民はこのような考え方を否定した。これまでだらだらと継続してきた公共事業の中止もありうるはずだ。

 投入した金と時間が無駄になるから、事業を継続するという答えは存在しない。完成しても、もはや意味のない設備をさらに金を投じて完成させる意味はない。完成後も、そのような無意味な設備には維持費という膨大な税金が永遠に投入される。民主主義というものは金と時間に手戻りがあることになる。これを否定するならば、お隣の国の独裁政権を選択しなければならない。


 もう少し冷静になって、この事業は事業として成り立つかどうかを明確に評価しなければならない。事業評価の方法にはいくつかあるが、現在の投入資金に対して、これから将来に得られる予想収益を算出して、その総額を現在価格に換算する。得られた値が投入資金よりも大きければ事業としては成り立つが、小さければ事業は廃棄と結論される。

 ダムの総事業費4600億円のうち、すでに3200億円が使われ、ダム本体工事など残る事業費は1400億円である。この額で完成できるなどと誰も考えていない。ダム完成による便益として考えられる利水効果や治水効果は、今ではほとんど皆無と発表されている。

 観光事業としての収益も微々たるものであろう。つまりダムを完成させても、将来の便益はこの57年間にすべてなくなっているのである。こうなると、補償などの中止に伴う追加費用を投入してでも、ダム工事中止は正しい判断となる。
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