科学予算

科学技術開発論
 過去50年間の理系ノーベル賞受賞者の70%は米国国籍である。2008年度物理学賞受賞の南部陽一郎先生は米国籍にカウントされる。ノーベル賞がすべての科学指標となるわけではないが、米国が世界の科学技術の最先端を走っていることには変わりはない。第二次大戦後、自由と資金を求めて多くの科学者が世界中から米国へ渡ったことにもよるが、ここでは人とは違ったことを研究対象とする独立精神が風土的に横溢していることによるところが大きいと思う。

 また、原子爆弾や宇宙開発に見られるように軍事大国として、国家として巨大なプロジェクトに取り組む姿勢が明確である。兵器と医療関連の開発はコストを問わない研究であるから、科学者たちは思い切った発想で開発に取り組むことができる。これらの開発から民需用の成果も多く出てきている。インターネットやGPSなどもすべて軍事技術から派生してきたものである。

 事業仕分けでは目的や趣旨が議論の対象ではなく、コストに対して産み出された成果が見合うかどうかが論議の的となる。だから、科学技術開発のような、カネはかかるがその成果がどうなるか分からないようなものに予算がつくわけがない。京速計算機開発や日本科学未来館などの予算がばっさりと落とされることは当然と思う。ナショプロと称する国のプロジェクトは過去、ほとんど成功していない。


 世界最高水準の研究開発は不要ということではなく、コスト論議には向かない性質のものである。それではどこで議論すべきかとなるが、そうなるとすぐに顔を出すのが、日本では各学界のボスや有名大学の教授たちである。そのような限られた学者の判断に委ねることは止めて、ネットを利用して、もっと広くさまざまな分野の研究者から研究課題を募集すべきである。

 これまでの国家プロジェクトで成功したものは少ない。世界最高水準の研究は日本にとって欠かすことはできない。これを実現するための方策を生み出すべきであろう。スパコンは日本製がトップに立ったこともあるが、今では国がカネを出しても、世界最高域には届かない、研究として購入すれば開発予算の10分の1程度である。研究テーマの選定、予算の配分、成果の評価など学会のボスや一部の権威者と称する人々の判断に任せることをやめて、多くの関係者の総意をネットを使ったまとめるのがよい。
http://iiaoki.jugem.jp/