努力してもできないこと

努力すれば報われる
 自己啓発はやりで、その代表選手がカツマ先生であるようだ。最近はテレビでも、その大きな顔を見かける。先生は沢山の本を出しているから、店先でどれか一つを15分も立ち読みすれば、だいたい内容が想像できる。30代前後の女性を中心にファン、もしくは信者が急増しているという。誰でも「努力すれば救われる」と信じて、何かにすがろうとするので、このような生き方本は売れ続け、自己啓発セミナーや新宗教まがいは次々と誕生する。
 

 教祖ご自身は、頑張って努力して報われた人かもしれないが、同じようにしてみても、誰もが教祖と同じように成功するとは限らないのが人生であろう。努力することは人の生きがいであることは確かかもしれない。問題は成功とは何かということで、目的が達せられなくても、自分で或る程度の満足感を味わえることができたら成功なのかもしれない。


 カツマに対する批判者として、心理学者の香山リカ氏が「しがみつかない生き方」という本を書いて、これも良く売れているみたいだ。だから自己啓発や努力論争は何だか、出版社の陰謀みたいに思えてくる。「がんばれば夢はかなう」とか「向上心さえあればすべては変わる」といった「前向きなメッセージ」と裏腹に、現実は「頑張ったが病気になって夢は消えた」とか「向上心はあったが、資格試験に受からない」というのが大部分の人たちの状況であろう。


 カツマの本では、人間の弱さ、だらしなさ、理不尽な宿命などといった、人間あるいは社会が宿命的に背負っている性質への配慮は見あたらない。こんなことを言うと「あなたはそんなことを考えているから成功しないのよ」と一喝されて目が覚めるかもしれない。
香山リカ著「しがみつかない生き方」幻冬舎新書
http://iiaoki.jugem.jp/