ポスト京都議定書

COP15開幕
  7日から始まる気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)ではオバマ米大統領ら約100カ国の首脳が出席するだけでなく、ノーベル平和賞受賞者や王室メンバー、人気歌手らが続々集結、環境問題の重要性を世界にアピールすることをデンマーク政府が企画している。15日には、アマゾンなどの熱帯雨林の保護基金を立ち上げているチャールズ英皇太子が、各国代表団を前に「熱帯雨林保護」をテーマに講演する。

  重要なことは、温暖化のデータの正確性、京都議定書の完全実施で100年後に得られる効果1兆ドルに見合う投資額の推定、各国が平等に排出ガス削減の負担で合意できるかなどである。デンマーク政府の意気込みとは裏腹に、温暖化フェスティバルで終わるような予感がしている。

  最大のテーマは1997年のCOP3で決まった京都議定書の目標が2012年に終了するので、それ以降の削減目標を決めることだ。この会議に向けて各国は、それぞれに2020年までの削減目標のアドバルーンを上げているが、共通の物差しを使っていないので、比較が難しい。まずは基礎データとして、世界の炭酸ガス総排出量の推移は、1990年で210億トンが2009年現在は4割上昇の290億トンであり、2030年予測では400億トンと40年間で2倍になるという。


  国別では、現在、中国と米国はそれぞれ20%で最大の排出国となっている。日本はロシアとインドの5%に続いて、第5位の4%である。そして2020年までの目標は、中国としては、単位GDP当たり2005年比で40~50%、米国は2005年比で17%、日本は1990年比で25%と公表されている。これでは比較できないから、日本の1990年比におおまかに換算すると、中国はプラス、米国は4%となるようだ。


  排出量については、先進国と新興国との考え方の違いは当然で、中国についてデータをみると、1990年では世界全体の11%だったが、2009年現在では21%、2030年予想では30%となり、米国の同時期のデータ23%、20%、14%と比べるとよくその差を理解できる。中国、インド、ブラジルなどの新興国では、先進国並みの目標を受け入れることはできない。結論としては、この会議では、何も決まらず、せいぜい京都議定書の延長が決まる程度であろう。


  工業発展と炭酸ガス排出量は密接な関係にあるから、排出量の比較は、GDPとの比で考えるのが適当と思われる。単位GDP当たりの排出量を計算すると、トップはロシアで2.32、第2位は中国で2.00、第3位は米国で1.02、ついで、ドイツ0.73、日本0.60、イタリア0.47、イギリス0.34、フランス0.33となる。この順位の表すところは、省エネ生産の進み具合である。ロシアや中国はまだまだ省エネ技術を導入する余地が大いにあることになる。
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