トヨタの蹉跌

どうした陸の王者
     トヨタ自動車は米国で販売している8車種、合計230万台を対象にリコールを行うと発表した。アクセルペダルが戻らなくなる危険性があるという。昨年に続くアクセル関連のリコールで、安全性など高品質を売り物にアメリカ市場で占有率を伸ばしてきたトヨタに何が起きているのか。前回は運転席のフロアマットがはずれてアクセルペダルに引っかかり、アクセルペダルが戻らない事例だったが、今回はアクセルペダルそのものに不具合があり、前回とは別の原因としている。

トヨタと言えば、数々の品質に関する栄誉を受けてきた日本的品質管理の象徴的な存在だったはずだ。GMを抜き世界一の販売台数を目指し、それを達成したのはいいが、世界展開を図る生産拡大のこの過程で、技術者不足による納入部品のチェックなどに手抜かりがあったことは容易に想像できる。

   問題は単なる人手不足だけではなく、高度成長期において日本国内の製造業で行われてきた日本的品質管理が世界展開では通用しなくなり、国際標準であるISOの品質管理だけに頼らざる負えなくなったことにもよるのであろう。

    日本的QCでは取引関係者だけのクローズドなもので、良いものを徹底的に生産するシステムを構成していたが、国際標準のQCでは、やり取りはすべてオープンになるため、どうしても書類ベースでのシステムが主要となる。ここに大きな違いがあり、この違いに気が付いている製造業では両者のよいところを取り入れて成功している例もある。

   空の王者であった日航の経営破綻があった直後の、陸の王者のこの躓きは、昨年のGMの経営破綻と引き合わせて、何かの予兆ではないことを祈りたい。昨年の赤字決算にも驚いたが、トヨタにいま求められているのは、これからの自動車産業の方向性に関する明確なる意思表示と哲学である。新社長の鼎(カナエ)の軽重が問われている。大企業病からの脱出を先ずは心せよ。
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