政教分離の原則

牛刀をもって鶏を割く判決
   市有地を神社の敷地として無償で提供した行為は、政教分離原則を定めた憲法に違反すると最高裁大法廷は判断した。これまでに、この原則について、何件か憲法判断が出されているが、宗教団体をバックとする政党の存在に遠慮してか、殆ど合憲との判断が示されているから、大法廷もようやくまともな裁判をした当初は思った。
   


    しかし内容をみると、その土地で長年にわたり慣行として行われてきた些細な宗教上の儀式に対して、「牛刀をもって鶏を割く」みたいな判決ではないかと思ってしまう。世界のどの宗教でも同じであるが、その土地で土俗的、世俗的に出てきた宗教はやがて政治や経済の一部となって発展してきた。明治維新廃仏毀釈の影響で、神社は国家管理となり、敷地は公有地化された。戦後憲法政教分離の原則から、全国に約10万ある神社はそのまま神社の所有になっている。

   もともと地方の自治体はその地域の神社から出てきたようなところもあり、特に土地の氏神様のようなものや、自治体の所属する公園の慰霊施設、キリスト教の殉教碑のような宗教と自治体の敷地との分離が難しいところは至る所にある。これらすべてに目くじらを立てて、政教分離の原則に反するから、今さら切り離せなどと言う必要はあまりない。最高裁はこのように、日常的に誰もが不便を感じていない事に対して熱を入れるのではなく、票の格差など国の行政を揺るがすような、もっと大きな問題に対して切り込むべきであろう。

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