ユーロ危機

ユーロの死はあるか
  欧州連合EU加盟27カ国のうち、通貨ユーロを導入済みの16ヶ国をユーロ圏という。この圏内の総生産額は日本の約2倍の990兆円で、人口は日本の3倍である。ギリシャの財政危機に続いて、スペイン、ポルトガルやフランスまで財政危機に近づき、頼みの綱は圏内ではドイツだけとなっている。安全な資産としてドイツ国債に買いが集中して、10年物の流通利回りが2.5%にまで下がっている。これに対して、ギリシャ国債利回りは10%で、ギリシャ政府はドイツの4倍の金利を払わないと国債を発行できない状況となっている。
*日本国債長期金利:1.125%(7月13日)
  

  気の早い経済学者はユーロを止めて元の通貨への復帰も近いなどと言う。このまま財政危機の諸国がドイツに支援を頼むと、支援総額は200兆円にもなるため、ドイツは拒否してマルクへ回帰する可能性がある。そうなれば、比較的状況のよいオランダ、オーストリアなどはドイツに従うことになるから、事実上、ユーロ圏は消滅するかもしれない。

 
  先日、ハンブルクからベルリンを通り、プラハブラチスラバ、ウイーン、ブダペストの5カ国の首都を周遊してきたが、ベルリンにいる古い友達は「怠けものをどうして我々が助けなければならないか」と憤然としていた。しかしながら、EUとユーロは、20世紀に二度にわたり欧州を戦禍に巻き込んだドイツの原罪を払拭するために、ドイツが最大の犠牲を払ってできてきたものだから、そう簡単には突き放すこともできないようだ。


  周遊した5カ国はすべてEU圏であるが、まだユーロ圏ではないチェコハンガリーが含まれている。これらの国でも、商店やカフェーではどこでもユーロが通用していたので、現地通貨へのチェンジは必要なかった。電車や国立の博物館などへの入場には現地通貨を必要としていた。だから、すでにEU加盟27カ国内では、実質的にユーロ圏となり、いまさら元の通貨への回帰などは物理的に不可能と思われる。時間をかけて財政危機のある国を立ち直させる努力をドイツを中心となってするしか方法はないように思える。それがドイツの宿命なのだ。
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