学者の論文コスト

国立大学の論文コスト
  研究者や学者が生産する商品は論文と特許である。この論文を生産するのに、どれくらいのコストがかかっているのかを算出するのは難しいが、国立大学では研究費の配分額が分かっているから、あとは年間に何本論文がしかるべき学術誌に掲載されたかで算出可能となる。文部科学省科学技術政策研究所の調査によると、東京大学の論文の生産コストが国立大学の中で最低レベルにあることがわかったという。
 

   研究費を論文数で割った1本当たりの生産費を比較すると、東大など旧7帝大は生産費が高いことも判明した。研究費としては国からの科学研究費補助金や企業からの受託研究費など広義の研究費を集計したものを、国内外約3万件強の科学や医学の専門誌に掲載された一定の水準以上の論文の数で割って論文の生産費を算出している。

  具体的には東大では論文数は4553本で1位だったが、1本当たりの生産費は1845万円となる。東大より上の8校は東京外国語大や一橋大といった文系などの大学で論文数が少ないために生産費が高く出ているので、これらを除外すると実質的には東大が最も高かった。論文数700以上の大学に限ると、以下、大阪大、東北大、京都大と続いた。1000万円未満の大学が55校あるが、旧帝大はいずれも1000万円を上回っている。

  論文数だけで大学や教授の評価をすることではないが、旧帝大の先生方は研究予算を多く取っている割には、アウトプットの論文が少ないことは事実であろう。また、研究費をかけたからといって、論文数が増加するというものではない。科学の分野によって、論文をたくさん書ける場合もあるし、いくら金と時間をかけてもなかなか論文にはならない場合もある。湯川秀樹先生は論文を書かないことで、いろいろと大学から文句を言われていたそうであるが、ある日、生み出した論文でノーベル物理学賞を受賞している。
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