消費税について

各国比較は無意味(2010-9-8)
  日本は5%でG8の中でも最低だから、「税率を10%にしてもよい」と管首相が提案して、国民の理解が得られると思ったが、参院選挙で惨敗した。どこかの学者の説を引用して、「増税しても景気は悪くならない」とも言うが、全く説明不足でそんなはずはないと考えている人は80%にも及ぶ。


  財務省がそのHPで説明しているように、仏19.6%、英17.5%、独19%と数値だけ見れば確かに日本の税率は低い。しかし、各国にはそれぞれに事情があり、表面に出てきた平均的な統計数値だけの比較はまやかしである。例えば、英国では食料品など日常的に消費される品物には消費税はかからない。レストランでの食事、毛皮のコート、自動車などの贅沢品などに消費税が適用されている。仏国、独国でも品目の違いはあるが原則は同じである。

  日本の非課税品目は、保険、医療、教育、福祉などに限られている。他国にあるような軽減税率はない。殆どすべて押し並べて一律5%税率である。だから、収入の少ない層ほど負担率が高くなり、生活困窮者を直撃する。このことを消費税の逆進性という。

景気への影響であるが、1997年に3%から5%に上げてから大不況に突入し、銀行や証券会社が破綻した。その年のGDPは23年ぶりにマイナス成長を記録した。日経平均は税率アップが閣議決定される前日の1996年6月26日に22666円だったが、その後、いまだにこの値を越えることができないでいる。僅か2%の上昇で、このような状態であった。


輸出戻し税(2010-9-10)
   製造業では商品を売った時に受け取った消費税額Aから、材料や部品を仕入れた際に支払った消費税額Bを引いた分(T=A―B)を税務署の納めることになる。輸出製品では、輸出先の国から消費税を取れないから、A=0となる。この製品を国内で製造する時、材料や部品の仕入れにかかった費用にかかる消費税はBであるから、納める税額TはマイナスBとなる。税務署から払い戻しを受けることになり、これが輸出戻し税となる。



   トヨタなどの輸出企業では消費税を納めるのではなくて、巨額の還付金「輸出補助金」を得ている。当然、輸出だけではなくて国内でも販売している。総売上高10兆円とすると、法人税40%の課税対象額は4兆円となる。これの5%が課税売上にかかる税額A=2000億円となる。これに対応する仕入れ高を3兆円とすると、これの5%が国内仕入れにかかる税額B=1500億円となる。この企業が税務署に納める税額は500億円となる。

   ところが、輸出戻し税を仮に2000億円とすると、この税の仕組みから、差し引き1500億円の還付を受けることになる。これこそ、トヨタ、キャノン、ソニーなどの輸出大企業が消費税の仕組みによるウマミと言われている。現在の税率5%が10%になれば、単純に計算すれば、還付金は3000億円となる。当然に、経団連をはじめ輸出企業は消費税のお幅アップを期待している。現在の日本の消費税の仕組みが、いかにおかしなことかが分かる。