公募増資での疑惑解消

空売り規制

  金融取引は株式や債権が上がれば儲かるという単純なものだけではない。下がれば儲かるという仕組みもいろいろある。その典型的な取引が空売りである。ゴールドマンサックスGSはギリシャ国債の暴落で、この空売りを使って大儲けしたと言われている。1998年にドル連動制によって高止まりしていたアジア各国通貨に対して、ヘッジファンドの猛烈な空売り攻勢で暴落し、アジア危機が発生したことも記憶に新しい。
  

  市場に発生する歪を利用して利益を得るのが金融取引の基本だ。空売りは、株価が下落しても利益を得られる投資方法だ。しかし、投機的な空売りの乱用により、意図的に株価を下落させることは違法である。現在、問題となっている取引は、上場企業の公募増資に関する空売りだ。大型の増資では、短期的には1株当たりの利益が薄まるから、株価は下落しがちだ。この時が空売りで利益を上げやすい状況となる。

    空売りは、証券会社や他の株主から株式を借りて売却する取引だ。株価が下落した時点で、借りた株式の数量を買い戻して、借主に返却すれば確実に利益が出る。昨年9月に東京電力が公募増資を公表した翌日に、株価が10%近く下落した。これは投機筋による空売りがあったと見られている。

    このような不透明な取引を防止するために、公募増資の公表後、新株の発行価格が決まるまでの間、空売りして新株を取得することを禁止する方向は妥当なことだ。米国ではすでに同様な規制は実施されている。これだけでは十分ではなく、増資発表前に情報が漏れて、空売りされるケースがある。これはインサイダー取引に属することで、関係する企業や証券会社の情報管理の問題である。アジアにおける金融取引のメインとなるためには、透明性の高い金融市場の整備が急がれる。
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