GMの再生

GMアメリカのすべてだった
     カナダはUSAの北側に位置しているのが常識であるが、面白いことに自動車の町デトロイトはカナダの町ウインザーの北側に川を挟んで位置している。日本から来た出張者にはこのことは殆ど理解されていないことである。


    この川の縁にルネッサンス・センターという巨大なビル群がひと際威容を誇っているが、ここから少し北に位置していたGMの本社がここに移ってきている。毎年2月の下旬にこの傍のコボホールアメリカ自動車協会SAEの総会と展示会が開かれるので、世界中から自動車関係者が集まってくる。現在は、1月に国際自動車ショーとなっている。

 
   その最盛期ではGMアメリカそのもので、GMのすることはアメリカの役に立つことであるといわれていた。GMは1908年にビュイックが中心となって、その他の小さなメーカーを統一して設立された。この年にはフォードが一世を風靡したT型フォードを発売した。設立者のデュラントはその後、オールズドモビル、キャデラックなどを次々と買収していったが、その資金負担に耐え切れなくなり、投資銀行に経営権が委ねられた。

   GMを世界最大の企業に育てた人物がA.P.スローンで、その経営哲学は著書「GMとともに」に、GMの歴史を振り返りつつ語られている。この本には経営哲学、組織論、戦略論などマネジメントに関するあらゆるポイントが書かれていて、マイクロソフト社のビル・ゲイツも愛読書の一つに挙げている。含蓄のある言葉に「失敗を気にしていては革新することはできない。野球では打率3割で強打者といわれるが、それは10回のうち7回までは失敗であったということである。これでは会社経営は成り立たない」。

   1970年代までは米国の自動車産業で圧倒的なシェアをもっていたが、安価で高品質の日本車の攻勢と、大量生産による規模の経済が通用しなくなって、90年代の初めには倒産寸前にまで追い込まれた。その後、経営陣の刷新と企業改革の推進で何とか立て直してきたが、リーマンショックで倒産した。現在、政府の援助で再生し、開かれている自動車ショーにも昔とは比べようもない、小型のエコカーを展示している。
http://iiaoki.jugem.jp/
http://twitter.com/#!/goroh