産業構造の転換

産業構造の転換 新しい技術の創出
  物づくり産業の代表である鉄鋼産業と自動車産業の歴史の流れを観察していると、現在の日本の産業構造の方向が見えてくる。近代的な製鉄業は18世紀中ごろの産業革命期の英国にはじまり、欧州の各国を経て、19世紀中ごろにはその生産の主体が米国に渡って行った。その頃の足跡はいまだにピッツバークの町にある。


  第二次大戦後、日本はこのアメリカの製鉄業を受け継ぐ形で日本の復興に貢献してきた。米国の鉄鋼業との技術交流は長い歴史があり、当初は米国からの技術指導の導入であったが、1975年頃からは、立場が逆転して、日本側が米国の製鉄業を技術指導することになっていった。この流れは現在、日本から韓国、中国、インドへと推移してきている。

  自動車産業は19世紀の中ごろからドイツや英国で始まり、20世紀に入り米国へ受け継がれて、ビッグスリーという巨大な産業形態を形成していった。1955年頃から発展していった日本の自動車産業が、1980年代に入ると米国へ進出して、やがてはビッグスリーを凌駕する勢いをつけて行った。そして鉄鋼業と同じように、現在では韓国、中国、インドなどの新興国での自動車産業へと受け継がれてきている。

  欧州や米国では鉄鋼や自動車産業のような物づくり産業にはこだわらず、鉄や車が衰退したら、ITやバイオ、医療など先端的な技術開発を生み出すシステムが大学の研究室やシリコンバレーなどのハイテク産業基地から発信されてきて、新しい産業を興し雇用を創出してきている。20世紀型の産業にはもうアメリカの大学卒業生は全く興味を示さなくなっている。必然的にこれらの産業の中心はアジア諸国を中心とした新興国に移っていく。これが産業構造の地球規模の動きであり流れであると思う。

  これに対して、物づくりということに未だに強く拘りを持っている日本は、それなりに先端的な技術でも相応のものを生み出して来ているが、最高水準の技術を生み出してきた鉄や車からの産業構造からの脱出は容易なことではない。工学系のどこの大学のパンフレットを見ても、相も変わらず「物づくり」という言葉を見出すことができる。これを否定するわけではないが、新しい技術は「物おもい」というシステム作りから生まれてくるものと考えている。
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