株主総会の季節

株主総会企業価値
  6月29日をピークに3月期決算上場企業の株主総会は終了する。昨年から1億円を越える役員が公表されている。昨年と同じように平均役員報酬額のトップは日産自動車で昨年の1.6億円から2.1億円に上がった。実に8人の役員がこれに含まれている。

  

  1999年にゴーン氏が日産に来てから、それまで破綻寸前だった企業を立て直した功績は大きい。コストカッターと言われるその手腕は、それまでの日本企業の風土に合わないから、彼を嫌う日本の財界人も多かったが、これだけの実績を示されると沈黙しないわけにはいかない。エコール・ポリテク出身でミシュランからルノーに移り、日産に来た。ここで彼のしたことは、一口でいえば、企業価値を向上させたことに尽きる。その結果は株価の上昇に現れている。


  企業価値とは現在から未来にわたる企業の稼ぎを現在価値に換算したもので示される。この背景にはファイナンス工学の考え方がある。会計とファイナンスの違いは、前者は過去の利益を取り扱うが、後者は未来のキャッシュを取り扱う事にある。だから前者は確定的な帳簿上の金額で考えるが、後者は確率的な生の金額で考えることになる。


  企業価値を上げるためには、事業に要するカネのコストを下げることであるが、従来の日本的なシステムでは、このことはあまり意識されてこなかった。そのために黒字倒産みたいな現象が起きていた。どうしたら企業価値を向上させることができるか。途中を省いて、結論を言うと、投下資本利益率ROICをできるだけ大きくして、加重平均資本コストWACCをできるだけ下げることである。


  このためには、営業利益を上げること、税制度の有効活用、設備投資の最適化、非事業資産の売却、投資判断の明確化、運転資金の管理、在庫の圧縮、最適な資本構成にする事などである。日産自動車はこのような対策を着実に実施して企業価値を高めた。

*ROIC:Return On Invested Capital
*WACC:Weighted Average Cost of Capital
*投資判定基準:ROIC>WACC