光の速度

ニュートリノが光の速度を超えたか

   アインシュタイン(1879~1955)博士が相対性理論を含む5つの論文を発表したのは1905年だから26歳の時だ。ノーベル物理学賞を受賞したのは1921年で、その内容は有名な相対性理論ではなくて、金属に光を当てると電子が飛び出すという光量子仮説に基づく光電効果の理論的な解明である。当時、勤務していたスイスの特許庁に通うバスの中からみたベルンの時計台の針が不動に見えた事からの着想による相対性という考え方は、物理学会でもなかなか理解が得られなかったからだ。同時に受賞したのはデンマークのボーア博士である。

   

   1922年に来日途上の船の中で物理学賞受賞の電報を受けたが、そのまま日本への旅行を続けて、11月中旬に神戸港についてから、各地で講演と歓迎を受けて、離日したのは年末に門司港からだった。先生の残した足跡は戦災などで殆ど消滅しているが、箱根の富士屋ホテル門司港の三井倶楽部などで宿泊した部屋など記念として残されているのを見たことがある。

   アインシュタイン理論の基本は、光の速度よりも早い物質はありえないという事だから、ニュートリノがそれを越えてかもしれないというデータには驚かされる。光の速さは真空中で秒速30万kmだ。太陽から地球までは1億5千万kmだから、太陽が発した光が地球に届く時間は500秒で、およそ8分となる。宇宙の大きさを知るためには、光の速さを使う。光速のロケットがあったとして、これが1年がかりで進む距離を1光年と表す。計算すると、1光年はおよそ1億mの1億倍となる。これは想像できない長さだ。現在観測されている地球から最も遠い星までの距離は120億光年という。これまた想像外のスケールだが、宇宙の大きさはこれ以上と推測される。


   アインシュタインの式を見ると確かに光速よりも早い物体があると、根号の中がマイナスになるから、おかしなことになる。初めて見たときには、何かふに落ちないが大先生の言うことだから信じればいいと思った。発表された内容は、多くの物理学者が年月をかけて測定したデータだから、そんなことはあり得ないとは言えない。ただし、どんな測定データには誤差が付きまとう。特に、光の速さに近いような物質の測定だから、考えられないような誤差が入っているかもしれない。