不思議な判決

今度は裁判官が暴走する

   検察官が暴走して証拠を改竄したり、手前勝手な調書をでっちあげたりする事件が続いていた。今度は裁判官が訴因にもない事件を勝手につくり、証拠もないのに、いい加減な判断で推定して認定する判決が出てきた。政治家の秘書が帳簿をつけ間違って政治資金規正法違反に問われていた事件で、9月26日に出た東京地裁の判決である。


   判決文の内容は東京地検特捜部が初めに作文した内容そのもので、さすがの特捜部も当初は贈収賄事件として捜査を始めたが、裏献金問題などの金銭授受を証明するものがなく、最後は収支報告書への記載間違いだけの政治資金規正法違反だけにしかならなかった。これについても、検察調書の大半が東京地裁では特捜部の捜査段階での適法性は疑われて、証拠としては採用されてはいない。


   疑わしきは罰せずという刑事事件の原則を外れて、疑わしきは罰するという異常な裁判結果だ。さらに、公共工事では世間で言われている天の声などという俗な内容まで認定しているのだから、戦前の暗黒裁判よりも野蛮な判決だ。もとより天の声などと認定した公共工事が行われた平成15年には、この政治家は野党であるから、決定権などはあり得ない。検察では単なる記載漏れでの訴因を、裁判官が贈収賄事件にまでに独断でしてのだから。この判決は三文小説以下の内容だ。


   その上に、あろうことかそこまで犯行を認定しておきながら、最後には執行猶予つきだから、何をかいわんやである。贈収賄事件を推認したのだから実刑判決でおかしくはない。おそらく、それこそ天の声で、絶対に有罪にすべしと言う事がこの裁判官に聞こえていたはずだ。この裁判官にも若干の良心のとがめがあったのであろう。あるいは、天の声に対するささやかなる抵抗で、そうしたのではないだろうか。素人が見ても何とも首尾一貫性のない奇妙奇天烈な判決内容だ。