家賃の差額に課税する

納税制度の欠陥

   日本の納税制度は給与所得者に対しては源泉徴収で厳しく、自営業には甘いと言われている。それは各人の所得の捕捉がしやすいかどうかにかかっている。サラリーマンの所得は給与明細表で明確にされているからだ。ところが給与所得者も表面には現れていない間接的な恩恵を被っているケースが実際にはある。その最たるものが、朝霞官舎建設で問題となっている公務員の官舎とか企業では社宅制度である。国会議員にも宿舎を始め、交通費など様々な特典が無税で支給されている。  

   市場価格では1カ月の家賃が50万円にも相当する官舎に住んでいる財務省の幹部が支払う金額は僅か3万円程度と推定される。そうすると差額の47万円に対しては税金がかからない所得と見なすことができる。これはフリンジ・ベネフィット、つまり追加的給与と呼ばれている。家賃以外にも、保養所や託児所などの供与、社内レクリエーション費の補助、市場金利よりも有利な融資制度、家賃補助、食費補助、通勤用定期券支給、自己啓発費用補助などがある。 これらは殆ど実質的に非課税である。

    米国の納税制度は源泉徴収をする日本と違って、新入社員をはじめ誰でも2月から3月にかけて、前年度の所得に対して個人個人で申告するものだ。そして、このフリンジ・ベネフィットに対する監査が厳しく、当然に家賃や家賃補助でも課税の対象とされる。そればかりか、出張で航空機に乗るとマイルエッジがつくから、これが会社のカネを使った個人への恩恵とみなされて課税対象ともなる。その代わり、日本ではありえないが、仕事に係わる背広、靴、書籍などに対して必要として認められる場合もある。復興増税などと言って一律に所得税や住民税を上げるのではなくて、もっと合理的に課税対象を増やすことができるはずだ。