投機の哲学

文明の起源

溝に落ちた哲学者

   欧州は経済規模からいえばユーロ圏17カ国では僅か2.5%しかないギリシャの出鱈目財政に振り回されている。世界史ではギリシャ・ローマ時代として古代文明の発祥の地として、哲学、数学、オリンピックなど数々の栄光ある歴史を学んでいる。現代に生きる人たちには、そのような誇りある歴史とは無関係みたいだ。
  

   ギリシャの哲学者としてはソクラテスプラトンが有名である。それよりも前の紀元前620年から540年まで生存したみたいだが、歴史に最初に名を残した人はターレスである。ギリシャ七賢人として知られている。哲学よりも、中学校の数学の教科書に必ず出てくるターレスの定理でおなじみかもしれない。これは「直径に対する円周角は直角である」という定理である。

   投機の事を英語ではspeculationというが、もとはラテン語の哲学用語で、考えを巡らせる意味と思う。世の中の真理に思いを巡らせば思索になり、カネ稼ぎに頭を使えば投機となる。ターレスは歩きながら思索にふけり、ある時、溝に落ちて怪我をしてしまった。これを見て、人々は哲学者というのは、日常生活では役に立つことは何もできないと人種だと笑った。

   これを耳にして彼はカネ儲けの秘策を練った。今でもギリシャからトルコにかけての地中海沿岸では作物と言えば、先ずはオリーブだ。でき具合は天候に左右される事は当然だ。ターレスは天文学や気象学から、その年はまれに見る豊作とはじき出した。そして、彼の住んでいた小アジア西岸のミトレス周辺の搾油工場を、すべて借りうけた。オリーブは油が商品だから、生産者はターレスの工場を通さないとオリーブ油として市場に出せない。かれは搾油工程を独占して大金持ちとなった。

   その当時、哲学や数学などは実用にはならない学問と思われていた。しかし、本当の学問は、大学入試センター試験やクイズ番組のように知識の総量ではなく、思いを巡らせることだ。ターレスは思索することで、様々な日常的な出来事にでも応用できることを証明して見せたのだ。つぶしがきくとかきかないという言い方があるが、考えることは学習の第一歩であることは普遍である。
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