法の論理と物理学

法学と物理学

  物理学は法則を数学化して、あとはひたすら数学的な操作だけで様々な結論を導く。その結果がすべて物理的に同じ価値の内容をもつとの保証はない。それを確認するためには、数学的な操作の途中で数式から得られるイメージを描き出して、物理現象との整合性を見なければならない。以上の言葉はノーベル物理学賞受賞者の朝永振一郎先生の「物理学とは何だろう」に出ていたものだ。
  

  法律的な問題は、法学上の概念や法律の内容に置き換えて、それによって導かれる推論をひたすら形式的に推し進める。その結論が必ずしも妥当性を持つという保証はない。だから、推論を進める適当なポイントで現実的な問題や常識と照合させて、不都合な箇所がないかを確認する。形式的な推論を現実的な意味で確認する必要がある。裁判も同じことだ。


  法律は論理の組み立てで成り立っているが、その論理は単なる数学的なものではなくて、必ず現実的なあるいは常識的な思考過程との調整が必要となってくる。法律学も物理学も重要なのは、ある結論に至る論理の筋道だ。法律学では得られた結果が日常生活の常識を壊すようなものであってはならない。ところが、物理学では、数学的な道筋で推論して、常識とは異なる結果が出てきても、それが直ちに誤りということにはならない。そこのところが法律と物理の決定的に差である。

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