リスクについて考える(1)

賭けごとの範囲

賭けてもいいよ

  この言葉は日常的に使われているが、どこまでが刑法上の罪に問われるのか、その境界の判断は専門家でも分かれている。刑法185条に定めるところは、賭博をした者は50万円以下の罰金とあるが、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、犯罪は不成立とされている。また1項では、常習として賭博をした者は3年以下の懲役となり刑が重くなるが、単純な賭博は、刑法の中でも最も軽い刑罰である。


  賭博行為は民放90条にある公序良俗、すなわち公の秩序と善良な風俗に反する法律行為だから認められないとなる。国民の射幸心を煽り、勤労の美風を損ない、経済活動への影響を避けることと、副次的な犯罪を防止することにあるともいわれる。それでは毎日、パチンコ屋で過ごして生活費を稼いでいる人は、これに該当するのではないかと思われるが、パチンコは競輪、競馬、競艇、宝くじなどと共に法律で保護されているから問題ないという。

  賭博罪が成立する条件として、当事者双方がともに損をするリスクを負担することがある。だから、ゴルフ大会やビンゴゲームでの景品は、当事者の一方が景品を用意するだけで、負けても損を生じないから賭博には当たらない。ただし、何でも金銭を賭けたら賭博罪となるようだ。サイコロ、花札、マージャン、ゴルフ、パチンコなどすべてについて言える。プレー代、夕食代などを賭けても直接金銭を賭けてはいないから、常識的な範囲では認められる。


  賭博の背景には偶然性に賭けるということがある。有価証券取引、保険、宝くじ、競馬、競輪、競艇オートレース、お年玉付き年賀はがき、サッカー籤、懸賞などすべて、偶然性がその背景にあるが、これらはすべて法律で認められているから、賭博ではない。こうして見ると、賭博罪については行政の恣意性が感じられる。野球賭博もサッカー籤と同じようにすれば、問題はなくなるみたいだ。リスクと言う言葉は日常的に使われているが、危険性と言う意味ではなく、蓋然性と言う意味だ。つまり確率的な考え方が背景にある。