りすくについてかんがえる(5)

リスクについて考える(5)
投資の話
   現在、日本国全体では赤字が1000兆円であるが、個人資産が1550兆円という。差し引き黒字であるが、このようなマクロ的な数値の由来はどの本を見ても、どの程度に信用できるなかはよく分からない。確実なのは、日々の暮らしの中で賃金や物価の上げ下げである。個人資産のうち、現金預金など流動性のあるものは、その半分程度であろう。そのうち200兆円ぐらいが、株や債券などに投資されているようだ。
 
   投資は法律で保護されている賭けであり、ばくちと同じようなものである。銀行に金を預けるなという書物を信用して、株を購入したが損をしたとブログで述べている人もいる。投資は賭けであるから、専門家が必ず儲けるはずがないから、あくまでも投資は自己の責任でしなければならない。

   ばくちだから、原則は簡単で「安く買って高く売る」だけである。問題は買い時や売り時で、その判断のための個人の意思決定にすべてがかかっている。2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマン教授がプロスペクト理論という心理的要素を導入した意思決定理論を打ち出している。まず、次の二つの簡単な問題に答えを出してみたい。ノーベル賞へ挑戦してみよう。

 問題1.ある人から10万円を貰ったが、その上、次の二つの選択肢が示された。どちらをあなたは選ぶか。
A.さらに、5万円もらえることが保証されている。
B.サイコロを振り、偶数ならばさらに10万円もらえるが、奇数が出たら何ももらえない。

 問題2.ある人から20万円を貰ったが、そのうえ、次の二つの選択肢が示された。どちらをあなたは選ぶか。
A.5万円を確実に返さなければならない。
B.サイコロを振り、偶数ならば10万円を返さなければならないが、奇数が出たら何も返さなくてもよい。

   へそ曲がりは別にして、多くの人は、問1.ではAを、問2、ではBを選択することになる。要するに、人間の選択行動は、利益を獲得する局面では確実性を好む。しかし、損失の予想される局面では賭けを好む傾向にある。

   株式相場が上昇する局面では、すぐに売って少ない利益でも満足する。その反面、相場が下落する局面では、ふたたび上昇を期待して、売ることをしないので損失が拡大恐れがある。投資には専門家やプロはいない。自己の意思判断だけが唯一の頼りであることを肝に銘じておきたい。これが投資のリスク管理だ。