慙愧に耐えない

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慙愧に耐えない思い
 首相は閣内の大臣の自殺に「慙愧(ザンキ)に堪えない思い」とコメントした。この言葉を耳にした人で、何か違和感をもった人も多いと思う。あまり使われていない言葉だから、若い人にはその意味すら理解できない人も多いと思う。慙の字も、愧の字もともに恥という意味を表わすから、「慙愧」という言葉は「恥+恥」でどうしようもない恥であることを表している。自分のしたことにたいして悔い恥じることである。
[:ジョギング:]

 そして「慙愧に堪えない思い」というと、「私は恥ずかしくて皆さんの前に顔出すこともできない思い」ということになる。そうすると首相のコメントを理解して、彼の心の内を率直に示しているものとして、そのまま理解すると「私は彼の死ということに接して、彼を大臣に任命したことを大いに恥ずかしく思っている」という意味になる。

 あるいは、「彼は任命者の私に対して、とんでもないことをしてしまったので、私は恥ずかしくてどうにもならない」思いとも読み取れる。それとも単に「ただ残念に思う」ぐらいの意味で表現したのであろうか。そうだとするとその程度の学力の人が最高権力者だと思うと慙愧に堪えない。

 首相は自分の非を認めているのか、それとも自分に恥をかかせた人に対して恨み事を述べているのか、よく理解できない。それとも言葉遣いそのものを間違ったのかとも思うが、最高権力者のコメントであるからこのまま尊重すべきと思っている。

 政治家、特に大臣の自殺行為は一般人のそれとは明確に異なる。第一に政治家は選挙で国民から国の運営を負託されているのであるから、途中でその任務を放棄することは許されてはいない。第二には、国務大臣は総理大臣から任命されるが、天皇から認証されているのであるから、その重大な任務を放り投げたことになる。「死者を鞭打たない」という日本の風土をたてに、「死んで責任を取ったからもういい」では済まされないと思う。