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人材の流出=技術の流出
 台湾、シンガポール、中国などのアジア諸国に職を求める人が増え続けている。人材派遣会社に登録して海外への就職を希望する専門職の数はこの5年間で2倍になった。高度成長期の1970年代から80年代では、サラリーマンたちは「会社と結婚」という言葉が流行するほど、所属する会社に対する忠誠心が強かった。そして企業も社員たちに定年までの雇用を保障することを約束して、社員の福利厚生を重視してきた。90年代になって、バブル崩壊によって不景気が長く続いたため、企業は定年までの雇用を保障する約束を忘れて人員を削減した。


 台湾政府は半導体や液晶ディスプレイといった日本の先端技術の移転を促進するため、東京や大阪などで毎年、海外就職説明会を開いている。移住する家族のためにも、各地に日本語で授業を行う学校を開設している。これを受けて、日本の会社員たちも、自らを雇用市場における商品として身を置くようになった。40代前半から50代前でリストラされた人たちは海外に目を向け、海外での就職という道を選ぶようになった。

 台湾は2万5000人ものエリートを日本から引き入れ、半導体、液晶、エレクトロニクスなどの日本の先進技術を学んだ。そして今、中国やシンガポールなどのアジア諸国もまた、先端技術だけではなく鉄や車などの日本の専門知識や技術を持った人材の誘致に力を入れている。アジアの発展途上国では日本からの人材誘致で経済発展を狙っている。これに伴い、日本の技術の海外流出という問題を招くことになった。資本の国際化だけにとどまらず、かくして頭脳の国際化が始まっている。