乱用的買収者

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乱用的買収者
 東京高裁は、投資ファンドのスティールを「乱用的買収者」と認定した上で、ブルドックの防衛策は「相当性を有する対抗策」と認めた。東京高裁はスティールを乱用的買収者と認定した根拠として「最終的には対象会社の資産処分まで視野に入れたひたすら自らの利益のみを追求しようとしている存在」と指摘した。

株式は市場に公開されているのだから、誰でも平等に手にすることができるし、株主を色分けして差別してはならない。この「株主平等の原則」が崩れては資本主義を支える株式会社制度が成り立たない。また、株式の保有と経営への関与は別のものである「経営と所有の分離」も法律でも保証されている原則である。今回の東京高裁の判断は、この二つの資本主義の根幹ともいうべき原則を破るもので、今後の日本の株式市場にある種の影を下したものである。すでに海外からは、日本市場は相変わらず閉鎖的で、対日投資の見直しが言われている。

 ブルドック側の買収防衛策は、以前から準備されていたものではなく、ファンドから買収を仕掛けられてから、慌てて用意したものであり、この時点でも、特定の株主を敵視した対応である。新株予約権無償割り当てで、ファンド側には権利行使の代わりに23億円が支払われることになっているが、このことは一般株主の利益に反することである。さらに、ファンド側は、この金を使って、再びブルドックの買収に取り掛かれば、出資比率を回復することができる。このようなことを繰り返していては終わりのない買収劇の始まりということになる。

 乱用的買収者とは、株主の権利を乱用して企業価値を損ねる買収者を指しているが、今回、このファンドを乱用的と認定した根拠もあいまいで、ブルドックの企業価値を損なう事実はなく、これまでのファンドの実績を指摘しているだけである。他の企業の例も含めて、M&Aについての問題は終わらない。