自動車部品工場

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自動車部品工場
 柏崎市にある自動車エンジン部品のトップ「リケン」の工場での生産が止まり、トヨタ、日産、ホンダ、三菱という日本の代表的自動車メーカーの操業が不能という。エンジン部品のピストンリングでは日本では50%のシェアというから、ここからの部品が止まると車が生産できなくなってしまう。車1台は細かいのも入れると約3万点の部品で構成されている。日本の組み立てメーカーは、トヨタ自動車の作りだしたジャストインタイム方式で、できるだけ在庫を持たずに生産するシステムを構築している。すべて順調に動いていれば、コストダウンに絶大な効果をもたらすが、交通が遮断されたり、部品工場での生産が止まると、すぐに本体の組み立て工場に影響が出てくる。仮に1か月もリケンの生産が止まれば、1000万台という国内生産の1割弱が減産となる。
 柏崎市の西山町といえば、故田中角栄氏の故郷であり、今回の地震で実家もかなり被害を受けたようだ。この「リケン」という会社は、角栄氏と全く無縁のところではなく、彼が故郷を出て東京にいき、頼りにしたのが、故郷の先輩であり東大教授で理化学研究所の理事をしていた大河内先生である。

先生は今でいうところの技術移転に熱心で、研究所で開発されたものを基にして、理研傘下の会社群を作っていくことに精力的であった。今では、現在の理化学研究所とは全く関係はないであろうが、その名前に歴史をとどめている。新潟新幹線や原子力発電所誘致なども何らかの形で角栄氏の影響があったのであろう。

 理化学研究所はその後、日本の科学技術の発展に数々の功績を残してきた。その中に、自動車会社と鉄鋼会社への貢献を見逃すことはできない。現在、日本の自動車会社が米国や欧州に生産拠点を築いていっているが、そこにはよく見ると影のように日本の鉄鋼会社が何らかの形で進出していっている。

 高度成長期に自動車用鋼板の進歩と日本車との関係を構築していくことに、中心的役割を果たしたのがこの理化学研究所なのである。新聞報道では、リケンの工場が操業停止して、自動車会社が生産停止したとしか報道されていないが、その奥にはこのような日本の工業の歴史が隠されていることは興味深い。