世界の鉄鋼業

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世界の鉄鋼
 近代鉄鋼業は英国に始まり、欧州大陸に渡り、19世紀から20世紀にかけて米国へ移り、第二次大戦後に日本へと移ってきた。「鉄は国家なり」と言われていたように、米国でも日本でも鉄鋼産業は国を作る基幹産業としての役割を果たしてきた。特に日本では、1955年頃からほぼ30年間にわたり、産業のコメとしてその役割を務め、質量ともに世界一の鉄鋼業を確立してきた。

 その後、鉄鋼生産基地は韓国、中国、インド、ブラジルへと移り、いまだに質的には日本はリードしているが、量的には中国やインドにその地位を譲っている。インドのミタルスチールは欧州、米国、ロシアなどの鉄鋼先進国でのM&Aにより生産量では年間1億2000万トンの世界一の製鉄会社となっている。

 今年、トヨタ自動車GMを抜いて世界一の自動車会社になる。その背景には日本の鉄鋼産業との相補関係があり、国内で培ってきたこの連携は、自動車会社が海外へ進出しても継続している。トヨタが欧州へ進出するにあたって、新日鉄からフランスの鉄鋼会社へ自動車用鋼板の技術が供与されていった。ところが、仏国のこの会社が、ミタルスチールの傘下に入ったことで、新日鉄はある決断をせざる負えない立場となった。

 これまでのトヨタとの関係から、仏国の会社との連携を断つことは、トヨタとの関係を断つことを意味している。今回、すでに新聞発表されているが、新日鉄はこの仏国の会社との連携を維持することになった。すなわち、新日鉄の4倍の生産量を持つ世界一のミタルスチールに対して自動車用鋼板の技術を供与することとなる。すでに米国では既に同様な関係ができている。

 「今後数年以内に、世界の鉄鋼業界で、年間粗鋼生産量2億トンの企業が誕生する」と宣言しているミタルスチールの次なる標的が日本の鉄鋼会社に向けられていることはいうまでもない。20世紀後半の日本の高度成長期を支えてきたモノづくりの象徴である日本の鉄鋼会社には、買収回避のためのどのような秘策があるのであろうか。