ノックアウトマウス

遺伝子欠損マウス
 生命体は自己複製を行う分子機械であるとすると、その機械の部品を改良することが可能である。たくさんある部品の一つを動かなくして、その時に生命体にどのような反応が生じるかを調べることで、その部品の役割を知ることができる。このように生命の仕組みを分子レベルで解明することが可能となってきた。ある一つの部品情報だけをDNAから切り取れば、この実験をすることができる。つまり、ある部品情報が叩き壊されている--ノックアウト--マウスを作成することである。本年度のノーベル生理学医学賞を受賞した特定遺伝子欠損マウスの開発である。
 
 すでに、全世界で分子生物学者がこの技術を使って、さまざまな研究を実施している。ところが、ある部品をノックアウトしたマウスから受精卵を作成して、それを別のマウスの子宮に入れて子どもを作り、その子どもの成長を観察しても、何事も起こらずに普通のマウスとなってしまうケースが多いという。

 遺伝子ノックアウト技術で、ある部品を取り除いても、その欠落は生命体の成長とともに埋められてしまい、何ら機能不全が生じないケースが多いということに生命体の本質が存在することが分かってきている。生命はプラモデルのような静的部品から成り立っている分子機械のようなものではなくて、部品自体が動的な平衡状態を維持しながら拡散していくというモデルが考案されている。

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