芸術の秋 フェルメール

芸術の秋
 オペラなどの音楽とか絵画彫刻というのは、それらが生まれた土地で鑑賞するのが最高と思うが、そのようなことができるのは限られた人にしかできないことである。幸いこの秋には東京に様々な芸術作品が来ているので、愛好家ならば平日に休みをとって駆け足で一回りしてくることができる。まずは早起きして上野の森に出かけてみよう。


 西洋美術館ではムンク展(~1/6)を開催している。ムンクは人生の不安、生命の躍動、愛と挫折などをテーマとして多くの作品を残している。有名な「叫び」は来ていないが、「生命のダンス、絶望、不安」などが公開されている。20年ほど前に出張で訪れたオスロ「叫び」を見たときの胸を締め付けられるような不安を思い出した。

 次いで訪れた東京都美術館ではフィラデルフィア美術館展(~12/24)が開催されている。ここにはルノワールドガ、マネやモネなど世界的に名高い印象派マティスピカソら20世紀の名作77点を一堂に展覧している。中でもルノアールの「大きな浴女」が有名である。街の北西部に広がる緑豊かなフェアマウント公園の一角にたつギリシャ神殿を思わせる白亜の殿堂がフィラデルフィア美術館である。周辺には工業規格を定める協会などが集中しているところである。

 ブリジストン美術館ではセザンヌの特別展(~11/25)が開催されている。人物、静物、風景、水浴の4つの魅力を主題とした作品が展示してある。同館所蔵の「帽子を被った自画像」に並べて、関連するこれらの作品が集められている。最後は時間がないので、慌てて京橋から六本木まで地下鉄で行き、閉館の1時間前に国立新美術館へ到着した。

 オランダ風俗画展(~12/17)と名をうっているが、お目当ては言わずと知れたフェルメール「牛乳を注ぐ女」である。同時にアムステルダム国立美術館所蔵の作品100点余りが公開されている。アムステルダムで鑑賞した時の印象よりも意外と小さな作品で、時間を超越した絵画である。アムステルダムではかなり傍で見ることができるので、その大きさが分らなかっただけであろう。フェルメールの作品は全部で37点しかなく、ある旅行会社の企画で2週間をかけて、全作品を鑑賞する旅が企画されたこともあるそうである。ただし、ボストンのガードナー美術館にあった作品「合奏」が現在は行方不明となっている。

 何だか、絵を見に行ったのか人垣を見に行ったのか定かではない不思議な芸術鑑賞の一日であった。入場料は1400--1500円であり、各館ともだいたい10時から18時までとなっている。