ブランド好きの国民性

ブランド好きの国民性 船場吉兆
 食品偽装はついに高級料亭にまで蔓延してきていることが分かった。船場といえば、山崎豊子氏の小説でしか知らない世界であるが、数百年の歴史のある街には厳しい家族制度、特殊な風俗や風習がいまだに残っている大阪商いの聖地である。そこの暖簾--のれん--こそ代々受け継がれてきた商人の誇りとするものであるが、それを穢したのではもはや大阪商人の立つ瀬はない。
 
日本人のブランド好きは世界でも有名であり、ひと頃は、エルメス本店などはパリへの日本人ツアー旅行客で店が溢れていたという。NYでも案内したある会社の重役が、有名なネクタイ屋で、手を広げて「ここからここまですべて買う」と言った時には通訳するのを忘れるくらいに驚いたことがある。東京の銀座には世界の名店が名を連ねているのも、そのような日本人のブランド好きを当て込んでいるからであろう。

 自分の趣味に合うとかいうことではなくて、誰でも知っているブランド品なら、当人が所有して合うかどうかは問題ではない。このブランドを信じ込む心の構造が、偽物を掴まされたり、偽装をはびこらせる原因になっているように思う。もっと自分で考えて、自分の趣味に合うものを手に入れる努力をすることが、偽物や偽装を追放する決め手であろう。

 ブランド好きの国民性に付け込み、そのブブランドの陰で行われていた悪徳商法は許せないが、ブランドものだからと言って、その中味をまったく疑わずに持ったり食べたりすることを自慢するような国民性も、あまり芳しいものとは言えない。品物や食物は自分の趣味に合ったもの、口に合ったものをよく吟味することが大切であろう。
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