ロシア下院選挙

怖いはなし ロシア下院選挙
 ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟を執筆した19世紀の後半のロシアでは、自殺者の増加、皇帝を含む要人の暗殺、親族の殺人など数々の暗い事件が渦巻いていた。このような背景で書かれた小説であるから、作家自身のシベリア抑留体験もあり、登場する人物や内容に現実味があるのではないかと思う。この小説は前篇であり、作者は後編の構想を持っていたが、それを世に出すことなく鬼籍の人となってしまった。後編の内容については、今ある小説を前篇と呼べば、この中に数々の伏線が張られていて、その線を辿ることで推察できると言われて、これについては後世、多くの作家が論陣を張っている。
 
 現在、最も高く支持されている話は、三男のアリョーシャは社会革命運動に身を挺して、ロシア皇帝を暗殺するということである。これに対して、最新版の翻訳者である東京外語大学の亀山先生は資料を駆使して反対論を唱えている。

 専門家が様々な資料やデータを駆使して推論していることに対して反論を試みることはできないが、書かれてはいない第二の小説の内容を妄想することで何が得られるのかは疑問に思う。第一の小説ですべては完結しているからである。

 現在、どこの国でも自殺者が増加しているデータが出ているが、ロシアは国別ではトップクラスに位置している。また、国内のテロ事件の発生率の高さとか、反体制ジャーナリストが暗殺される数などは飛びぬけている。

 その意味では18世紀後半のドストエフスキーの時代と多くの共通点がある。12月2日には定数450名のロシア下院選挙が行われる。大統領与党の統一ロシア憲法改正に必要な3分の2以上を獲得するかどうか注目したい。
http://iiaoki.jugem.jp/