冷戦終結会議

冷戦終結会議から18年
 20世紀の冷戦構造を終結する会議が1989年12月2、3日にイタリアのシシリア島の南に浮かぶマルタ島に停泊するソ連客船上で行われ、ソ連ゴルバチョフ大統領と米国のブッシュ(父)大統領の間で東西冷戦の終結宣言がなされた。歴史に名を残したマルタ会談から18年たった現在、世界は当時予想された地球の平和と繁栄の21世紀とは大きく方向を変えた混迷の世界へとなってしまった。

 強大なソ連帝国の崩壊で唯一の超大国となった米国は、むしろカウンターパートを失ったためにその方向を見失ってしまったかのように見える。米国の力の発揮がイスラム過激派の台頭という別の力を生みだしてしまって、眼には見えにくいテロとの戦いという泥沼に入り込んでしまったようだ。

 この背景には米国指導のIT革命とかグローバル化という手段が地球上に格差を生み、これがために民族と宗教を基とした地域の自立意識を高め、反米感情を生まれやすくしてしまったことによるのであろう。

 中世の地中海はキリスト教欧州諸国にとっては台頭してきたイスラム圏との支配権を争ったところである。11世紀に巡礼を目的とした十字軍はエルサレムまで侵攻して、騎士団を結成したが、しだいにイスラム圏におされていった。1453年に東ローマ帝国の拠点イスタンブールがトルコ軍に陥落させられ、ここにローマ帝国の末裔はいなくなった。

 1522年にはオスマン帝国のスレイマン1世によりロードス島は陥落して、東地中海の制海権を譲ってしまった。1571年にレパントの戦いで欧州連合軍がトルコ艦隊をせん滅したが、これも一時的なことで、十字軍の末裔たちはその後、本拠をマルタ島に移して、マルタ騎士団と呼ばれるようになった。十字軍時代のパレスチナに発祥した聖ヨハネ騎士団が現在まで存続している。

 18年前に東西冷戦に無血で勝利した米国は、マルタ島に引きこもり、未だに十字軍時代の郷愁に浸っている聖ヨハネ騎士団のようなまねをせずに、正々堂々とイスラム諸国との共存共栄の道を探る努力を探る方向で、国際的な世論を高めていくべきものと思う。
http://iiaoki.jugem.jp/