波乱の時代

波乱の時代
 1987年から2006年までの20年間にわたり、米国の中央銀行総裁として金融政策を司り、世界の金融市場に影響を与え続けたグリーンスパン氏の著作である。上下で1000ページを超える大著であるので、全部読んだわけではないが、日本経済について「日本の行動は他の資本主義国とは違う」として、その理由を「日本人にとって体面を失うことが、いかに屈辱的か」ということを挙げている。


 早期に不良債権処理を断行していれば、「調整期間はもっと短くなり、何年も前に通常の経済に復帰していたはずだと確信していたし、いまも確信している」と記述している。そして「日本人は多くの企業や個人の体面が傷つくのを避けるため、あえて巨額のコストがかかる経済の停滞を受け入れたのだ」とまとめている。

 しかしながら、グリーンスパン氏は最近の米国メディアでは、ITバブルの崩壊を立て直すために、超低金利政策に誘導して、住宅ローンで景気浮揚を図った張本人としているし、遡っては90年代後半にもITバブルで景気浮揚策をとった罪まで指摘されている。音楽でいうところの巨匠マエストロなどという敬称まで付けられているが、ITと住宅で2回もバブルを利用した張本人といわれ、落ちた偶像ではないかとも指摘されている。

 退職後もヘッジファンドや銀行の顧問に就任して、金稼ぎに余念がない。最も在任中に金稼ぎをした日銀総裁よりはましかもしれないが、前FRB議長としての品格が問われている。ひどいのは確信犯的に現在の状況を昨年早々に予言していたことも指摘されているし、サブプライムについてはFRBの責任ではないなどと最近も発言している。まさに老害というべきかもしれない。
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