バルカン半島の火薬庫

バルカン半島の火薬庫
 21世紀になり世界各地ではさまざまな紛争が後を絶たないが、これらの争いのカギを解くキーワードは宗教と民族である。バルカン半島には中世の十字軍の遠征以来、キリスト教イスラム教の混在する地域で、19世紀ごろから民族紛争の絶えないところである。第一次堺大戦のきっかけを作ったのもセルビアだった。コソボにはセルビアアルバニアの間に挟まれた四国の半分くらいの面積に200万人が住み、そのうち90--がアルバニア系のイスラム教徒という。この地域がスラブ系のキリスト教徒が大半を占めるセルビアからの独立を求めているのは当然のことと思える。


 「世界のすべての国が独立を認め、我々と外交関係を結ぶよう求める」と17日にセルビア南部のコソボ自治州政府の大統領は独立宣言をした。米国や日本をはじめ欧州連合の大半が承認する見込みである。ロシアや中国をはじめ、その領土内に自治州や共和国を抱えている多くの国や地域ではコソボの独立を認めると、自国にもその影響が波及してくるので、そう簡単に民族の独立を許すわけにはいかない。

 ユーゴスラビアの解体後、それぞれに緩やかな連合体で安定を保っていたが、この安定を破壊したのが、セルビアの故ミロシェビッチ大統領である。1998年にコソボへ侵入したことに対してNATO軍が介入して以降は国連の支配下に置かれていた。

 自国内に民族と宗教の対立関係の存在する国は、ロシア、中国、ベルギー、キプロス、スペイン、ルーマニアスリランカなどであるが、これらの諸国では、コソボ独立反対の意思を表明している。ロシアはチェチェンオセチアアブハジア、ナゴルノカラバフなどの自治州や共和国を抱えているし、中国はチベットウイグルをはじめとした多くの少数民族を抱えているので、コソボ独立には強く反対する。

 紛争の解決には国連の役割を欠かすことができないが、いまの国連安全保障理事会に民族と宗教の問題を解決する能力があるとは思えない。下手をすれば第三次世界大戦の引き金にもなりかねない。今のところは米国の圧倒的な軍事力の支配があるが、今後、10年間でロシアと中国の軍事力は米国をしのぐ勢いがある。
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