独仏関係

独仏関係とEU
 ドーデの短編小説に「最後の授業」というのがある。1871年普仏戦争でフランスが負けたため、アルザスプロイセン王国--ドイツ帝国--領になり、フランス語の最後の授業で担当の先生が「奴隸となっても、その国語を保っている限りは部屋の鍵を握っているのだから」とフランス語の重要さを生徒に語り、最後の授業を終える話である。


 アルザス・ロレーヌ--:Alsace-Lorraine--は、フランス共和国北東部のドイツ国境に近いアルザス地域圏とロレーヌ地域圏を合わせた地域で、ローマ帝国以来、フランスとドイツとの間で係争地となっていたが、第二次世界大戦以降はフランス領となった。ドイツ文化圏に属していて、住民の大多数がドイツ系で、話される言葉もアルザス語といって、ドイツ語の方言である。

 独仏は歴史的にもしばしば対立する関係にあったが、現在のメルケル独首相とサルコジ仏大統領になるまでは、EUの独仏枢軸関係を築いてきた。しかしながら、ここのところ再び不協和音が醸し出されて、その関係が冷え込んできている。原因は主としてフランス側にあり、まずサルコジ大統領がかかげる地中海連合構想にある。

 地中海を取り巻く北アフリカ諸国、中東も含めてフランスが中心となってEU型の共通市場を形成して、これら諸国の経済発展を促し、流入する移民を阻止する狙いがある。これに対して、EUを分断するとの恐れをドイツは感じている。

 もう一つはフランス政府が進める原子力や関連事業の中国、アラブ諸国、インドなどへの売り込みに対して、脱原発を進めるドイツにとっては、核不拡散の原則に反する行為と見えてしまう。ドイツとの協調を無視しているサルコジ流の政策にドイツは不満を隠していない。

 2000年にもわたる対立の関係はそう簡単には解消できない。独仏関係を修復していかない限り、EUもなかなか一体化とはならない。EUにとって、もう一つの障害は英国で、いまだに英国人は大陸のことを、あちらと呼んでいるし、ポンドをユーロとはしていない。
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