留学生争奪戦

留学生争奪戦
 多くのノーベル賞受賞者を出しているMITでは、教授陣だけでなく学生も米国外からの人材が多い。MITだけではなく米国の有名大学では、特に理系に限ってみれば、おおむね教授では3割、学生では4割が米国以外の国籍で占められていた。ところが2001年9月11日の同時多発テロを境にして、海外からの人材に対する審査が厳しくなり、特に留学生の数がピーク時の60万人から激減し始めた。
 
 科学技術に関しては知の超大国で世界をリードしてきた米国では危機意識が芽生えて、国務省を中心として教育サミットを開催して、海外からの優秀な留学生の確保への道を作り始めた。これまでは個々の大学が独自に留学生を獲得してきた制度に加えて、政府が予算をつけて積極的に頭脳の争奪を開始したのである。最高レベルのベスト・アンド・ブライテストという奨学金制度では、毎年1800万円の支給を5年間受けることができる。

 米国に限らず英国のケンブリッジ大学でも、世界的に優れた研究者と学生の確保には積極的で、50年前では大学院学生には留学生がほとんどいなかったが、現在では7000人のうち、半数近くを占めているという。優秀な教授および学生獲得の武器は奨学金であり、政府予算と大学独自のファンドからの資金がもととなっている。

 翻ってわが国の現状をみると、無名校はともかくとしても、有名校までが受験生争奪戦を演じているのが現状である。優秀な学生を獲得するというのではなくて、とにかく定員割れを防ぐことが至上命令みたいになっている。その上に文部科学省のいい加減な指導方針の揺れで、小中教育までおかしくなってしまった惨状の回復が急がれる。それと同時に、日本の大学へ進学するのではなくて、今は世界の大学へ進学する道も大きく開かれている。
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