イラク開戦5年

イラク開戦5年
 米英が2003年3月にイラク攻撃を開始してから5年になった。1940年12月に真珠湾を攻撃した日本が降参するのが1945年8月であるから、太平洋戦争よりも長くなった。未だに米国は出口を見つけることができない混迷が続いている。何故ならば、テロと言うどこの誰を相手に戦っているのかが分からないからである。この間、米軍兵士の死者は5000人を超えている。1965年から8年間にわたるベトナム戦争の米軍犠牲者60000万人の10%になろうとしている。
 
 今後の課題は過激主義者の敗北を確実なものにすることと、ブッシュ大統領は演説し、このまま放置すれば再び米国が攻撃の的となるので、テロとの戦いの継続に理解を求めている。残された1年足らずの任期内での解決を放棄した様子も目に見えている。民主党の大統領候補は戦闘部隊の早期撤退を選挙綱領としているが、共和党のマケイン候補は、米軍の100年間駐留とまで踏み込んだ発言をしている。

 米国の戦略であったシーア派大国イランの封じ込めも、今月初めにイラン大統領バグダッドを訪問して、シーア派政党が中核を占める現イラク政権と交流をしている。米国が倒したフセイン元大統領の政権はスンニ派で固められていたが、イラク国民の統一を図るために両派融和政策を指導しているが、米国がイスラム宗派の和解にまで踏み込むことは容易なことではない。

 イランの手は、イラクを越えて、レバノンシーア派組織であるヒズボラの戦力を増強し、パレスチナイスラム原理主義組織ハマスのロケット砲などの改良にまで伸びているようだ。このような状況の下では、ならず者国家を力で抑え込む路線も修正を迫られている。

 ノーベル経済学賞スティグリッツ教授は「この戦争は無駄ばかり。膨大な費用に見合う効果がどこにも見出せない」として、経済的価値評価から否定した。その著書「3兆ドル戦争」では費用対効果を論じ、巨額な戦費が石油価格高騰など米国経済停滞の要因をつくり出したと論じている。

 カントリー・ミュージックの「思い出のグリーン・グラス」の替え歌で「懐かしいホワイトハウスともお別れ、私は再びのんきな身分でテキサスへ帰る」と最近の晩餐会の余興で披露した大統領が去り、問題の解決は次の大統領に委ねられる。さて、これまでに1000億円も負担して、まだ航空自衛隊を派遣している日本はどうするのか。これ以上アメリカに忠誠を誓うこともないと思う。続々と撤退している国と同じようにイラクから手を引く時が来ている。
* The Green Green Grass of Home
http://iiaoki.jugem.jp/