付けのめぐりあわせ

付けの巡りあわせ
 暫定税率道路特定財源、年金、薬害肝炎、高齢者医療制度などすべては、これまでの自民党政治のつけが回ってきているだけで、現連立政権を担当している内閣とは直接には関係のないことである。確かに「かわいそうなくらい苦労しているのです」という首相の本音は理解できる。それでも首相という権力財源を使って、洞爺湖では夫婦連れで1泊100万円以上の部屋に泊まったり、毎晩のように打ち合わせと称して高級料亭を使ったりしている報道を見ていると、その本音を額面通りには受け取れない。

 いよいよ暫定税率廃止の期限が迫ってから、急に道路特定財源一般財源化を言いだしても、またまた抜け道だらけの法案を作って、国民の批判をかわそうとしているとしか受け取れない。党首討論で指摘されてから、急遽、政府と与党は一般化財源案を作成したが、10年間で59兆円の道路計画はそのままにしているし、必要な道路は整備していくとか、早くも抜け道を用意している。

 郵政改革の良し悪しは別にしても、これは元首相が米国から言われたにしても信念として言い続けてきたので、「聖域なき構造改革とか痛みに耐えろ」などという言葉の魔術に乗せられて、国民は300もの議席を与えてしまった。いま問題化している医者やベッド不足による緊急患者のタライ回しも、元をたどれば、彼が導入した競争原理や規制緩和の結果で、その代表例が後期高齢者医療制度と新医師臨床研修制度である。いずれも、2年半前に数を頼りに野党の反対を押し切って強行採決した法律である。

 地方医療の崩壊はこの研修医の自由化に一因がある。それまでは研修医の研修先は各大学で暗黙のうちに決まっていたが、今では研修医は自由に研修先を選べるので、症例の豊富で便利な都会にある有名病院に人気が集中した。そのため人で不足になった地方大学の病院が地域の公立病院などへ派遣していた医者の引き上げが始まったようだ。

 そして、日本に800ほどある公立病院のうち約100が医師不足による入院休止、さらに50ほどが廃院などに落ち込まれてしまった。医療制度は米国型の自己責任による競争原理を社会構造の異なる日本へ、そのまま導入してもなじまないところがあり、すべてを国家が面倒を見る北欧型とはいかないまでも、自由競争には歯止めが必要と思う。
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