日本人の労働時間

先進国といえるか
 G8とは先進国首脳会議で、日本は1974年の第1回の会合からのメンバーだから、当然先進国と思っている人が多いと思う。しかし、日常的な個人の生活、住宅事情、余暇の過ごし方、社会生活での礼儀作法、教育の水準、大学のレベル、医療や福祉の現状などから見て、本当に先進国と言えるのかと疑問を持って人も多いだろう。また、日本以外の7カ国の中にも、先進国と言える国はいくつあるのであろうか。
 
 そもそも、先進国という定義は何で決められているのか。技術力のある民主国家であり、なおかつ世界経済に大きな影響力を持つ経済規模の国とでもいうのであろうか。「日本は先進国の嘘」という本には、さまざまなデータから先進国を浮き彫りにしている。ここでは、国民生活に密接な関係のある労働時間について、紹介しておく。

 日本とドイツの労働時間の差は年間400時間であり、ドイツ人にとって3カ月分の労働時間にあたる。日本人は、ドイツ人よりも毎年3カ月以上も余計に働いていることになる。その上、日本では「サービス残業」があるので実際の労働時間はさらに増加する。先進国で労働者が享受すべき豊かな暮らしをおくる時間はない。日本では過労死や精神疾患が増えるのは当然となる。

ILO(国際労働機関)が1919年に誕生して、8時間労働制と残業規制を第1号条約で締結した。それから90年近くたつのに、日本はいまだこれを批准していない。さらにILOの労働時間に関わる条約22本を日本政府は一つも批准していない。「日本は豊かだが国民は貧しい」(ボーヴォワール)という実態は、このようなことからも示されている。少なくとも労働時間からは日本は先進国とは言えない。

*「日本は先進国のウソ」杉田聡著 平凡社新書 \720
第1章 環境後進国としての日本 
第2章 過酷な労働と貧しい労働の果実 
第3章 名ばかりの「男女平等」 
第4章 ゆがむ教育 
第5章 貧しい政治の現実 
第6章 先進国の条件 環境・女性・子ども・国民を第一に考える、先進国は他国を脅かさない
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