リスクに立ち向かえ

経済財政白書の矛盾
 先日、公表された経済財政白書の副題は「リスクに立ち向かう日本経済」としている。ファイナンスで使われるリスクという言葉は、地震などの災害リスクとは違って、危機、即ち、危険と機会と考えなければならない。白書の内容を見ると、執筆者はどうも、この言葉の意味を明確に理解しているかどうかすら怪しいことに気が付く。


 日本経済が抱えるリスクを短期、中期、長期という視点で分析して成長のための方策を論じていることはよしとする。短期リスクとして、米国経済の減速と価格高騰をあげ、長期リスクとしては高齢化社会社会保障費負担を上げ、消費税アップを示唆している。

 問題は中期リスクとして、企業や個人がリスクを取らず、収益のチャンスを逸していることをあげ、積極的にリスクテイクすることが必要としていることだ。つまり、貯蓄から投資へ、預貯金を引き出して、株式や債券などの投資促進を呼び掛けている。これに対しては、余計なお世話だと言いたい人も多いと思う。

 2007年9月30日に施行された金融商品取引法は、これとは全く矛盾する規制であることを太田大臣は知らないみたいだ。この法律は過度に投資家保護を強調しているため、金融機関は商品のリスクの説明に時間とコストを使わなければならなくなり、その商品を売りたいのか売りたくないのか分からないという現象さえ引き起こしている。小うるさい日本から逃げ出して、香港やシンガポールに拠点を移す機関も出てきている。

 その上、株式などの証券投資に対しては、政府では証券税制を高める動きまであるのだから、経済財政白書の主張していることとは、全く方向が異なる。口先だけで何もしない政府が、結局のところ一番リスクを取らない機関であることを暴露している。
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