WTO交渉決裂

WTO交渉の決裂
 ジュネーブで1週間も、日本から参加した農林水産と経済産業の二人の大臣は何をしていたのであろうか。米国と中国などの新興国との間で、いつものように双方の顔色をうかがい、どちらに立てば日本は良いかとうろうろしていたようだ。それもそのはずで、農業交渉では腰が引けているが、工業品では何とか合意したいとのことで、日本としてこの交渉をどのようにまとめるのかの戦略がなかったからである。


 153カ国が参加する交渉は、農産品と鉱工業品の関税を削減し、貿易の自由化を進めて、世界経済を活性化させる目的だ。最近の国際会議ではサミットでも見られたように、先進国と新興国との間での利害対立で合意の形成は難しい。米国の指導力の低下と新興国の勢いの強さによる。いつものことながら、日本は双方にいい顔をしようとするが、国際交渉ではこれではもはや成功しない。

 日本のアキレス腱は農業で、日本の農業就業人口はピークの1960年時点で1000万人であったが、現在はこの3分の1であり、しかもこの60%は65歳以上の高齢者という。農家一戸当たりの耕作面積では、EUは日本の10倍、米国は100倍で、圧倒的に規模で差が付いている。自民党の票田として保護政策で成り立ってきた農業が破綻している。規模の拡大や株式会社化で解決できるものではなく、付加価値の高い農産物の生産でしか解決の道はない。

 そこで、日本全体としては貿易自由化の推進は、経済の発展には欠かすことができないことは自明であるから、これまでの農業を国際的に通用するように抜本的に改革して、WTO交渉を妥結させる道を選ばなければならない。それと同時に、これまではあまり進めていない近隣諸国との経済連携協定FTA)を積極化する必要がある。
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