金融工学が悪いか

世界金融危機
 1929年10月24日は歴史に残るNY株式大暴落の日であるが、あれから79年目の9月15日も米国第3位と第4位の証券会社が消えた日として歴史に刻まれることとなった。これを契機として世界中で株式の暴落が起きていることに対して、財政金融大臣は「日本ももちろん影響を受けます。蚊が刺した程度とは申しません。きっと、ハチが刺した程度の影響はありますけれども、これによって、日本の金融機関が痛むということは絶対にありませんから」と述べている。さらに、アメリカ発の金融不安の可能性について、政府、日銀などが「世界の経済が冷静な状態に戻るための努力を惜しみなく行う」と強調した。
 
 資本主義の総本山であるNYウォールストリートに命運を託しているような世界金融市場の先行きは誰も予想できそうもない。予想できないことに問題の本質がある。新聞の解説記事によく出てくる言葉を引用すれば「すべてのことはデリバティブと呼ばれる金融工学を駆使した複雑な金融商品などを世界中に販売してきたことにある」となる。その解説者も本当のことは分かってはいない。

 すべての悪の根源はどうやら金融工学なる学問にあるみたいであるが、本当に金融工学がそうなのであろうか。関係する専門書を見ると、何やら呪文のような記号がたくさん使われていて、多少は数学の好きな人でも辟易するかもしれない。基本的な学問は確率過程論というもので、簡単にいえば将来の現象を予測することである。京都大学伊藤清先生がこの分野での世界をリードしてきている。

 だからと言って先生が金を稼ぐことを目的として研究をしたわけではない。確かに、先生の基本的な方程式を使って、オプション価格などのデリバティブなる理論が組み立てられている。しかしながら途中を飛ばして、結論を言えば、金融工学は確実に金を稼ぐ方法は教えてはくれない。だから、世の中に氾濫している「株式投資で確実に儲ける方法」というような書物はすべてまやかしであるということが理解される。未来のことは神のみぞ知る世界である。
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