公的資金100兆円

20兆円+75兆円 公的資金
 先週末にブッシュ政権は金融機関の不良債権買い取りに最大75兆円の公的資金投入方針を発表して、世界大恐慌回避のための金融機関救済劇を演じた。既に5大証券のうちの3つまで倒れて、証券、保険とくれば次は銀行となる。この衝撃が世界最大の銀行であるシティーバンクにまで及びかねないことを想定したやけっぱちの対策のようにも思われる。これにプラスして、日米欧の中央銀行からのドル買いの協調路線、空売り規制の拡大も実施して、ひとまず危機回避の手が打たれた。


 任期の迫った大統領としては、これまでの不人気を一気呵成に挽回するつもりなのか、あるいは、どうせ誰も支持してくれないなら、一か八かの手を打っても大丈夫と考えたのかもしれない。日本との違いは、公的資金を受け入れた金融機関の経営者には巨額の罰金あるいは懲役刑が科されることである。

 ファニーメイとフレディーマックに20兆円の資本を注入し、保険会社AIG救済に9兆円を融資してから、整理信託公社RTC創設で75兆円の公的資金投入だから、総額100兆円超となる。IMFがこの春に発表した全世界の金融機関の住宅関連損失は95兆円であったが、現在では120兆円に膨らんでいるから、すべての住宅関連の不良債権損失額に匹敵する金額となっている。これによりアメリカ発CDSのスプレッドも収縮することであろう。

 巨額の公的資金投入は私企業のモラルハザードを起こすが、そのような小さな問題には構ってはおれないという米国国家の意思のようにも思える。1990年代日本の不良債権処理のもたつきぶりを研究した結果、出来るだけ素早く巨額資金の投入を決意したのかもしれない。それならば日本も多少の貢献をしたのであろうか。

 これで米国発の世界金融危機がすべて回避できることを祈るが、ことはそう簡単なことでもないであろう。ともかく、最大75兆円の不良債権買い取り案についての議会承認を取り付けなければならない。それから、イラク戦費で積み上げた財政赤字にさらに、この公的資金が積み上がり、下手をすればドルの暴落ともなりかねない。経済財政にうとい新大統領には手にあまるかもしれない。

CDS:Credit Default Swap:企業の破産や債務不履行に伴う損失から投資家を守る金融派生商品。投資家が事前に融資金の10%程度の保証料を払えば、投資先の破産や債務不履行などの際に、CDSの引き受けてから保障を受けることができる。
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