元首相の引退劇

改革の成果はプラスですか
 「自分は27歳で衆院選に初挑戦した。次男も27歳。しっかりやれるはずだと思う」と地元支部での会合で支援を要請したという。派閥政治を否定して、日本政治を変えようとした政治家の引退劇としては、まことに平凡で無様なものとしか言いようがない。今回の総裁選で、自らが主導した構造改革路線が党内では歓迎されなくなった現実を確認したのであろう。もはや彼の座る席はないことを確信した末路である。


 財政政策の柱のひとつが、政府が2006年7月に閣議決定した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」である。この中で、国家財政の赤字体質からの脱却を目指し、2011年度には国と地方を会わせた基礎的財政収支プライマリーバランス)を黒字化させる方針を掲げた。これすらも、あっさりと新首相に切り捨てられては立つ瀬がないというものだ。

 2001年4月に首相に就任して「改革なくして成長ない」の言葉を事あるごとに多用して、反対する議員を抵抗勢力とレッテルを張って葬り去る独裁手法でことを進めた。新聞紙上での評価は功罪相半ばするというものが大半である。罪の方は格差社会を拡大して、国民の生活、福祉、年金、医療制度を破壊した張本人であることは間違いない。一方、功の方は何かと明確に指摘できる人は残念ながらいない。

 最大の改革と目される郵政民営化であるが、これによって、どれだけ国民の幸福度が上昇したのか示されなければならない。もっと端的にいうと、どれだけ金と人を投入して、その結果、どれだけ具体的な収益が挙がったのか目に見える形にしなければならない。

 改革にはプラス面とマイナス面があるのは当然として、その結果、マイナス面が多ければその改革は失敗だったというべきだ。大学の経営学部での格好の卒業論文テーマである。
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