金融にプロはいない

ファイナンスのプロ
 素人にはわかりにくい金融(ファイナンス)の話である。日銀総裁と言えば、金融に関してはプロ中のプロであるから、少しはましな内容のことを述べているのかと思ったが、全くの期待はずれである。金融政策決定会合後の記者会見で、景気回復の時期について「従来想定していた時期よりも少し先に延びている」と述べ、景気の停滞が長期化するとの誰でも出来る見通しを示している。


 また米金融機関の資本不足については、かつての日本と同様に公的資金を注入する必要性を示唆している。プロ中のプロの発言でも、この程度のことしかコメントできないのであろうか。さらに、景気の現状について「やや長い目でみれば、次第に緩やかな成長経路に復していく」としたが、「景気の下振れリスクを意識して点検していくべき局面にある」と強調して、これまでの楽観的な見方をやや修正した。

   最大70兆円を投じる米国の不良資産買い取り法については「重要な部分が明らかではない」として、ただ「金融機関が不良資産処理の過程で自己資本を棄損した場合、これを速やかに回復し、十分な自己資本基盤を維持することがきわめて重要だ」と強調したにすぎない。日本の不良債権処理でも同様のことがあったことに触れて「解決にはある段階で当局として、公的資金注入の判断を下さなければならない問題だった」として、日本を経験を見習ったらどうかということを述べている。

 これから分かることは、ファイナンスは未来の話であるから、この先何が起こるか分からない。総裁は通貨の番人としての権限と責任があるから、迂闊な発言をして、想定外の方向に事態が進展したら、取り返しのつかないことになる。要するに、素人でも言えるような無難なことしか発言できないということのようである。それとも金融にはプロはいないとも考えられる。囲碁、将棋、スポーツの世界ではプロの実力は抜きんでているが、ファイナンスについてはプロもアマもあまり変わらないということであろう。だからこそ面白いとも言えるし、投資の自己責任性が問われることとなる。
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