拉致は闇の中

ブッシュのあせり
 「拉致に対してカードがなくなったわけではない」と首相はコメントしているが、テロ支援国家指定は最強のカードだから、全くの負け惜しみとしか言いようがない。金融支援法とともに、任期の迫ったレイムダックの大統領がはなった最後の矢である。北朝鮮としても、早く何かをつかみたいから、表面的には核施設の無能力化と米国および国際原子力機関IAEA)の監視要員の任務遂行を再び許可することにしたのであろう。
 
 北に対して譲歩や妥協を重ね、北朝鮮にいかに最小限でも、何かを受け入れさせることに腐心してきた結果である。日本に対しては、他にもさまざまな制裁項目があるから、実質的な意味はないと国務長官は説明しているが、北朝鮮にとっては、ひとつひとつに対して、それに対応する譲歩を引き出す手段であるから、どんな些細なことでも拘っていくであろう。

 何も持たない国が、一番厄介な核兵器を手にすると、米国でも中国でも脅かすことができるのであるから、日本などは彼らにとっては、全く無視できる国なのだ。早速に、北朝鮮の外務省報道官は6カ国協議の合意を完全に履行するには「5カ国が経済補償を完了するかにかかっている」と主張して、拉致問題絡みでエネルギー支援を凍結している日本を牽制している。

 今回の合意は、北朝鮮核兵器開発計画の全体像を無視している。どこにどのような核物質があり、核ミサイルの配備がある、という諸点を把握しているとは思えない。それなのに北朝鮮に最大限の報奨を与えてしまった。拉致問題の解決は闇の中へと消えかかっている。
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