金融サミット

グリーンスパン氏の証言と金融G8
 「部分的には誤りはあった。銀行などが利益を追求すれば、結果的に株主や会社の資産が守られると思っていたが、それは間違いだった」と前FRB議長は先月、議会で証言した。そして、市場原理主義の考えに欠陥はなかったかとの問いには「欠陥はあったと思う。それがどのぐらい深刻なものかは分からないが、非常に悩んでいる」と答えた。


 さらに、世界観や理念が正しくなかった、うまく機能しなかったのではないかに対しては「そういうことだ。自由市場理論が例外なくうまく機能するという事例を40年以上も当事者として経験してきたこともあり、だからこそ私はショックを受けている」と率直に述べている。

 金融のことはすべて彼に任せておけばうまくいくという「グリーンスパン神話」が崩れ去った瞬間である。付け加えて「金融業界が予想以上に危険な取引に走り、当局の対応が遅れた面がある。私の経験では融資担当者は金融当局よりも、貸し出しリスクや借り手についてはるかによく知っていた。こうした決定的な支柱が崩れてしまい、衝撃を受けている。なぜそうなったのか、まだ十分理解できない」と苦悩を露わにして証言台を去って行った。

 自由放任主義を標榜した新古典派経済学に属する存在で、FRB議長としての発言はまるで、天からの声の如く、世界中の金融関係者を動かしてきた。その彼が現在の状況に困惑している。市場に非効率性や不安定性が存在するのは、神の見えざる手の動きを妨害する規制があるからで、その規制を排除すれば市場原理に従って理想状態に近づくという考え方が正しくはなかったことになる。

 11月14日にワシントンで開催される金融G8では、以上に述べた認識に基づいて、議論が展開されて、市場原理に対する何らかの歯止めがきかされることとなるであろう。しかしながらG8に集まる首脳たちは、日本の首相はもとより、誰一人として経済や金融に関する専門家はいないから、予め、すでに各国の専門家の間では議論が集約されていて、その案を首脳陣が承認するということとなろう。
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